社会の中で自分に合った働き方ができずに悩んでいる方は多いと思いますが、その原因が発達障害ではないかと考えている方はいませんか?
「自分は大人の発達障害かもしれない。」
「思うように仕事ができない……。」
「病院に行った方がいいのかな?」
などと悩んでいる方に向けて、大人の発達障害に関する情報を解説していきます。
- 大人の発達障害は子どもの発達障害とは違う?
- 大人の発達障害の方に見られる特徴
- 発達障害だと思ったらできること
- 診断を受けると利用できる制度やサービス
についてご紹介していきます。
発達障害とは
発達障害とは、神経の発達状況に起因する脳機能の差異により、日常生活にさまざまな支障が現れる障がいです。
医学用語では「神経発達症」と呼ばれていますが、現時点では発達障害という言葉のほうがなじみが深いかもしれません。
主に発達障害は、
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 学習障害、限局性学習症(LD、SLD)
の3つに大別されており、それぞれの障がいにより、できること・できないこと、得意・不得意が異なり、困りごとの内容も違っています。
発達障害由来の特性のことを、医学用語で「発達特性」といい、それらの特性は先天的な脳機能の差異によって生じるもので、親の育て方や本人の意図的な怠けのせいではありません。
発達障害についての詳細を、わかりやすく伝えているサイトや書籍などが出ています。興味のある方は、参考程度に調べてみると良いでしょう。
大人の発達障害になる背景
近年では、「大人の発達障害」というキーワードが一般社会でも飛び交うようになり、その数も徐々に増えてきていると言われています。
しかし、どうして近年になって、大人の発達障害が増えているのでしょうか。
その背景として、以下のような理由があります。
現在の日本では、乳幼児健診(1歳6か月及び3歳児を対象としたいくつかの健診)を受けることが行政で義務付けられています。
その中で、発達障害の傾向が見られる子供は、それぞれの特性に合わせて幼い頃から適切な療育を受けることが可能です。
しかし、2004年に「発達障害者支援法」が制定されるまでは、発達障害について、法律上の明確な定義はありませんでした。
そのため、今より制度が確立されておらず、世間にも発達障害の存在があまり知られておらず、療育の網目から抜け落ちたグレーゾーン領域の子供が多くいました。
この背景により、近年、大人になってから日常生活に生きづらさを感じて医療機関を受診し、初めて発達障害やグレーゾーンであることが判明した方を「大人の発達障害」と呼称しています。
大人の発達障害の診断数は増えていますが、実際に発達特性を持つ子供が多く生まれるようになったのかは解明されていません。
また、「大人の発達障害」といっても、障がい自体は幼児の時に診断される発達障害と同じ延長線上にあります。
【大人の発達障害】どうやって発覚することが多い?
人は誰でも、なにかしらの偏りや得意・不得意があるものですよね。
そのため、なんらかの発達特性がある場合でも、
- 本人がその特性のために苦しむことは少ない。
- 障がい特性を自然にカバーすることができている。
- 周囲とも問題なく付き合いができている。
などの場合、医療機関を訪ねることはまずないでしょう。
反対に、大人になってから医療機関を受診し、発達障害の診断に至った方たちの多くは、
- 職場での人間関係や担当業務に対して、恒常的な悩みや問題を抱えている。
- 多くの挫折を通して自己肯定感が低くなっているために、成功体験をしても自信が積み上がらない。
- 本人にとって必ずしもそうではないが、些細なことでつまずき、社会とのバランスを保ちながら生きることが難しい。
- さまざまな困難に遭ってきて、うつ病などの二次障害を発症している。
といった傾向が見られ、さまざまなカタチの「人と違う」「できない」「理解してもらえない」といった苦しみを抱えています。
発達障害が発覚する主なきっかけは、
- 本人が発達障害を疑って受診する。
- 家族や恋人に、病院に連れてこられる。
- 会社から受診を勧められる。
- うつ病の疑いを持って医療機関を受診したが、発達障害が原因だったと判明する。
などの場合が多く、どのケースもなんらかのトラブルや悩み事、困難があって医療機関を受診し、発達障害の発覚に至っています。
【大人の発達障害】どんな特徴がある?
「じゃあ、具体的にどんなことが当てはまったら発達障害なんだろう?」
と思われた方のために、大人の発達障害と呼ばれる方に見られる特徴をご紹介します。
【シチュエーション別】具体的な特徴 35選
大人の発達障害でみられる特徴をシチュエーション別に5項目に分類しました。
- 会話・コミュニケーション編
- 思考・行動編
- 対人関係編
- 日常生活編
- 職場編
ADHDやASD、LDの発達特性の中には、特性の領域が重なっている事柄があるため、今回は障がいごとの分類はしていません。
また、障がいの当事者でもすべての項目が当てはまるわけではなく、もし当てはまったとしても他の病気や障がいが原因の場合もあります。
各項目の文章中に黄色の下線が引かれている部分があり、特に下線部の内容が当てはまると、当事者の悩みの深さ・現実に問題が起きているか否かによっては、発達障害の可能性があります。
線が引かれていない部分は、環境や状況、個人の体調の変化、価値観の違いなどによって、個人差はあるものの、誰でも思い、経験する可能性のある内容です。
なお、以下で挙げられている内容は、発達障害をチェックするものではありません。以下の特徴に当てはまるからといって、必ず発達障害であるとは限らないことをご留意ください。
発達特性による困りごとの多様さ、発達特性の領域の広さを知るキッカケになれば幸いです。
会話・コミュニケーション編
- 同期と比べて自分の言動は稚拙でちょっと変かもと感じるが、みんなと同じように振る舞うことはできないし、そのことが悩みの種になっている。
- 会話全般が苦手で、頭が真っ白になり、対応ができなくて困っている。
- 家の中や自分の安心できる場所、苦手な人がいないことや大人数ではないことなど、特定の場所や特定の条件を満たしていないと話すことができない。また、安心できる家の中でも、状況が変わると話すことができなくなる(場面緘黙がある) 。
- 自分とは違う意見や価値観の人がいると、それをバカにしたり、見下して、実際に相手や第三者に伝えてしまう。
- 自分とは違う意見や価値観の人がいると、意見が何も言えなくなってしまい、一刻も早くその場から立ち去りたいほどの息苦しさを感じる。
- 人前でプレゼンをするのは得意だが、テーマが決まっていない井戸端会議となると何を話せばいいか、全くわからない。得意なことと不得意なことに偏りがある。
- 人前でプレゼンをする際や、他者と一対一で会話する際、会議など複数人でコミュニケーションをとる際、ランチや休憩中の雑談など、状況によって話しやすさに大きな差があり、すべてのことか、あるいはいずれかの場合に大きな苦痛を感じる。
- 高尚な思考を持ち、饒舌に語るけれども、たまに周りが引いている。しかし、別に周りに引かれてもかまわないと思うし、何なら気がつかずに一人で話し続けていることが多い。
思考・行動編
- 自分の仕事がみんなより劣っていると感じたり、嫌なことがあったり、仕事がつまらないと感じると全くやる気がなくなったり、体調が悪くなったりして、仕事に影響する。
- 新しく面白そうな業務が始まると、今までの仕事が途中であったり、責任のある仕事であったりするにも関わらず、途中で投げ出してしまうことや、どうでも良くなってしまうことがある。
- 好きなことは時間も忘れて無限に集中できる。
- ものごとへのこだわりが多く、他者に譲ることが難しい。
- なぜあの人はこちらの言うとおりに動かないし、やろうとしないのだろうと、立場や価値観の異なる他者への苛立ちが抑え切れず、力で押さえつけたり、怒りをぶつけてしまうことがある。
- 間違っている物事があったり、間違っている人がいたとき、「正さなくては」と使命感に駆り立てられ、他者と衝突することがやたら多い。
- 自分が思っていることが正しいと感じると、相手にもそれを強要してしまう。
- 協調性に欠けていると自覚しているものの、どうしても変わることができないし、そのことに強い悲しみや苛立ち、<ruby葛藤かっとうがある。
- いやむしろ自分が一番だ。自分さえよければ周りはどうでもいいと思い、自分勝手に振舞ってしまう。
対人関係編
- 怖い人や苦手な人、価値観が合わない人がいると職場に行けなくなる。
- 複雑な人間関係が苦手で、職場に行くのが怖い。朝起きられなくなり、何度も仕事を辞めているほどだ。
- 人の集団に恐怖や強いストレスを感じて、外に出られない・公共の場に行けない。
- 周囲の視線が気になり、外に出ればへとへとになって寝込んでしまう。
- 人付き合いの仕方がわからず、集団の中にいることに我慢できないほどの苦痛や窮屈さを感じてしまう。
日常生活編
- 時間の観念が薄く、仕事でもプライベートでもよく寝坊や遅刻をする。
- 約束をいつも忘れてしまい、大切な人を怒らせ、失ったことは一度や二度どころではない。
- ゆっくりやっても、お釣りの計算が全くできない。
- 鍵や財布なんて誰もが落とすものだと思っていたくらい、頻繁に物を落とす、失くす。
- 全く物を片付けることができず、「これはわざと散らかしているの。一応、場所は決まっている。」などと言い訳をしているが、本当はそのような自分なりの秩序はなく、ただただ片付けができないので本当は困っている。
- 友人と二人で会話しているとき、特に大事な仕事や大きな悩み、疲れなどもなかったのに、別の事を考えていた。「聞いてる?」と大きな声で言われ、肩を叩かれたときに初めて気がついたが、単語や会話のニュアンスなどが何も耳に入っておらず、全く聞いていなかった。
職場編
- 不器用すぎてよく失敗し、仕事に支障をきたしている。
- 「〇〇さん、それ前も言ったよね?」とよく言われる、呆れられることが多い。
- 職場でだんだんと居場所がなくなっている。肩身が狭いが、明確な原因はわからない。
- 仕事の説明を受けている時、「メモを取って」と指示され、話を聞きながらメモを取っていたが、まとめ方がわからず、メモをすることで頭がいっぱいになった。後からメモを見返しても全く意味がわからず、話の内容も覚えていなかったので、もう一度聞きに行ったら呆れられた。
二度目は実際の方法を目で見て、やり方を聞くことができたので、仕事の手順を正しく理解し、やり方を覚えることができた。相手(人・会社内のルールなど)のやり方に合わせることが極端に苦手で、自分のやり方でないとできないことがある。 - 専門用語や文字だけのマニュアルを渡されたが、文字がグニャグニャ動いて読めない。図解やイラストが多ければわかるのに、と思う(文字のみ読み取れる場合も含む)。
- 「パワーポイントで、データをわかりやすくグラフや表にまとめた資料を作ってほしい。デザインは任せる。」と頼まれた。しかし、手元にある文字や数字ばかりの資料を表にまとめようとすると、混乱してしまい、どのデータをまとめたらいいかわからなかった。また、パワーポイントの操作方法は教わったが、依頼されたデータに当てはめて応用することができなかった。
これらの事を上司に口頭で伝えようとしたが、頭の中で相談内容をまとめることができず、うまく話を伝えられないので困っている。 - 先輩に「今日から日誌が新しくなったけど、前の日誌とだいたい書くことは同じだから、適当に書いておいて。終わったら所長の机の上に出しておいてね」と言われた。新しい日誌を開くと、まだ1ページも書かれていない、白紙の日誌だった。前の人が書いたものがないので、どう書いたらいいかイマイチわからなかった。試しに以前の日誌を見てみたが、今回の日誌とは様式が異なっていて、書き写すことも難しい状況だった。
果たしてどんな書き方が正しいのか自己判断ができず、最後にあったコメント欄にはイラストで感想を描いたら面白いかな?と思ったが、それはさすがにやりすぎかとも思い、結局書くことができず、15分ほど席に座って考えていたら、帰ってきた先輩に「テキトーに書けばいいんだよ(笑)」と笑われた。自分は、「テキトーってどんなものだろう?」と思い、今考えていたことを一つひとつ丁寧に質問したところ、話が長かったとみえて、「そんなの好きなように書けばいいんだよ。イラストで書いてもいいんじゃない?(笑)」とまた笑われた。なぜ笑われなければならないのかと思い「それならそうと始めに全部説明してくれれば済む話ですよね?」とはっきり意見を言ったら、なぜか先輩は「ああ……わかったよ。次からそうするわ」とだけ言って先に帰ってしまった。なんだかそっけない気がする……。よくわからないが、なんとなく怒らせてしまったかもしれないと思うと気持ちが落ち込み、頭にモヤモヤが広がって日誌のことを考えることができず、結局1時間かかってなんとか書き終えたものの、日誌を所長の机に置いておくことを忘れてしまい、自分のカバンに入れて持ち帰ってしまった。
日誌を所長の机に提出する件を思い出したのは、帰りの混み合う電車内で、大勢の人がいるにも関わらず、思わず「あ!」と声を上げて叫んでしまった。慌ててカバンの中をガサガサと探ったせいで隣の人に肘がぶつかり、迷惑をかけてしまった。「どうして自分はいつもこうなっちゃうんだろう……。」と落ち込み、眠る時もあれこれ考え込んでしまい、よく眠れなかった。明け方に少し眠ることはできたが、次の日の朝は体調が悪く、出社がとても憂鬱だった。
精いっぱいの気持ちで出社すると、先輩が「おはよう。」といつも通り声をかけてくれた。悩んでいたのは自分だけだったのだろうか。先輩は別に怒っていなかったのだろうか。わからないが、ひとまずホッとした。そのとき、後ろから声がして、「〇〇ー!日誌が出とらんぞ。」と所長からお呼びがかかった。「すみません!」と慌ててカバンから日誌を取り出し、所長に手渡した。特にお叱りは受けなかった。無事に提出できて一安心だ。そして二か月後、〇〇は再び同じミスをすることになるが、それはまだ誰も知らない。
いかがでしたか。
- 「なんかわかる。」
- 「ちょっと経験した覚えがある。」
など、思い当たることがあった方で、実生活でも困っている、という方は、一度発達障害の傾向があるか、調べてみても良いでしょう。
セルフチェックができるとしているサイトはいくつかありますが、あくまで検査を受診する前の参考程度にしておきましょう。
子供の発達障害と比べると、背景がより複雑で、複数の物事や原因が絡まっていることが多いのが、大人の発達障害の特徴と言えます。
【大人の発達障害】検査や診断は受けるべき?
自分が発達障害かどうかの最終的な判断は医師の診断によりますが、目には見えない障がいを読み解き、他者のそれを「診断する」行為は、医師であっても非常に難しい行為で、一人ひとりの患者と向き合い、じっくりと原因を紐解いていく時間が必要です。
病院へ行って検査や診断を受けた方がいい目安としては、
- 自身のアンバランスさを適度に補正できているかどうか
- TPOに合わせて自己のコントロールが適切にできるかどうか
- 現在、一人では解決できない大きな問題や、悩み、苦しみを抱えていないか
といった3点に注目し、受診するかどうかを考えてみるとよいでしょう。
人間は誰もが偏りを持っていますし、体調不良によってコントロールがうまくいかないこともあります。
健常者の場合、そのアンバランスの程度が小さい・もしくは差があっても別の能力で補うことができ、ある程度は自己をコントロールすることができるのが特徴です。
一方、発達障害の傾向がある場合、しばしば現実と思考との間にギャップが見受けられ、かつ、本人がそれに気が付いていてもどうしようもできずに苦しんでいる場合と、まったく気がつかずに問題行動を起こしてしまっている場合があります。
そして、そのどちらも、「自身の特性を適切にコントロールすることが難しく、日常的になんらかの悩みや問題を抱えており、解決ができない」のが特徴です。
「自分のことを全然コントロールできない」と悩んでいる方は、一度精神科を受診してみるとよいでしょう。
診断を受け、適切なケアをしていくことで開かれる道もあります。
発達障害とは見分けが難しい別の病気や障がいであるケース
また、発達障害の特徴に当てはまっていても、発達障害ではないというケースもあります。
具体的には、
- うつ病
- 双極性障害
- パーソナリティ障害
- 統合失調症
- PTSD(強いトラウマ)
といった、後天的な病気や別の障がいが苦しみの原因となっているケースや、発達障害による二次障害として上記を併発しているケースもあります。
そのため、「もしかして発達障害かも」「仕事がうまくいかなくてつらい」「生きることが苦しい」と感じているなら、勇気を出して医療機関へ相談した方が、解決の道が早く見つかることもあるでしょう。
初めは戸惑うかも知れませんが、相談窓口に赴くことにより、一時の気晴らしや気休めではない「現実的な対処」ができると考えましょう。
その際、「早く診断してほしい!」と意気込んで病院へ行くと、すぐに結果が出ずに落胆し、医師に対して不信感を持ってしまう原因にもなりかねません。
障がいや病気によって差はありますが、診断に至るまでには、少なくとも半年の期間を要することを覚えておきましょう。
精神科へかかる際の気持ちの持ち方として、以下のことを意識しておくと良いでしょう。
- 自分の悩みや苦しみの原因を知るため
- 正しく対処し、自分を理解するため
- 焦らず気長に、自分を労わってあげるため
に診察を受け、通院するのだということが理解できるとよいですね。
ゆったりした気持ちで、落ち着いて受診しましょう。
自分が大人の発達障害かもと思ったらできること
「自分はたぶん発達障害だろうなあ……。」と思ったときに何をすればいいか、病院に行く前に、自分でもなにかしたい方、どうしたら良いか知りたい方に向けて、対策やできることをご紹介します。
情報を集める・発達障害を知る
幸い、インターネットには多くの発達障害に対する専門的な情報が溢れているため、自分で調べれば、おおまかな基本情報や対策などを得ることができます。
専門的な記事の他に、発達障害の当事者が自身の経験をわかりやすくまとめたブログ記事やマンガなどもあります。
ただ、みなさんそれぞれに立場は異なるため、自分の状況とは合致せず、「自分とは違う」と落ち込んだり、情報を探すのをあきらめてしまう方もいるかもしれません。
また、学習障害によって文字が読めない方にとっては、インターネットの記事を目で読んで情報をくみ取ることは困難かもしれません。
その場合、文章を音声で読み上げる機能や、スマートフォンの音声読み上げ機能などがあるほか、他者に協力してもらうことでも情報を得ることは可能です。
どのような情報でも全てを鵜呑みにするのではなく、また、他者と比べる材料にはせず、できるだけ自分の状況に沿った内容や正確な情報を集め、自身の生活に役立てましょう。
同じ立場の人たちと交流し、情報交換する
インターネットで情報を探すだけでなく、実際に同じ立場の方と連絡を取り合って交流したり、発達障害のある方が集まる地域の交流会に参加して情報を得るのも一つの方法です。
さまざまな障がいを受け入れて生活している方の意見や生活の知恵を聞くことは、人生をより良くするために有益な方法と言えます。
仲間がいれば、悩み事を相談したり、励まし合ったりもできますね。
相談しやすい人に相談
「まだ他人に会って話を聞いたり、相談するのは勇気がいる……。」という方は、まずは自分を理解してくれそうな方に相談してみるという手もあります。
家族や友人、信頼できるネットの友人などがいれば、そちらに相談してみても心強いかもしれません。
ただ、相談する相手に発達障害の知識がなければ、相談することによって逆に傷ついたり、気休めになるだけで問題は解決されない可能性もあるため、現実的な解決方法をお探しの場合は、各地域の障害福祉課や精神科の医師など、専門知識のある方に相談する方が具体的かつ専門的な提案を受けることができ、素早い支援に結び付きます。
地域の支援機関へ相談
専門的な相談ができる窓口は各都道府県にあります。
当事者の状況に合わせた多様な支援機関が存在しており、あなたの住む自治体にも発達障害を相談できる窓口があります。
相談したいときはまず、
- 各市区町村の障害福祉課
- 保健所(保健センター)
- 発達障害者支援センター
- 法務少年支援センター
などに問い合わせ・相談をしてみましょう。
各都道府県によって名称が異なる場合があるので、ご注意ください。
相談することにより、更に専門的な支援機関や医療機関、利用できる制度などを紹介してもらうこともでき、それぞれの立場に合った支援を受けることができます。
仕事のこと、暮らしのこと、病気のことなど、「何を相談したいか・解決したいか」ということをあらかじめ整理して伝えると、適切な支援につながりやすいです。
精神科・心療内科を受診する
病院で検査を受けたい・相談したい場合、はじめに受診する科は、「精神科」や「心療内科」のある病院、または「メンタルクリニック」と名のつく病院へかかりましょう。
その中でも、医院のホームページで発達障害について詳しく触れられている・発達障害の項目がある病院に行くことをオススメします。
精神科のお医者さんであっても、発達障害が専門ではない場合は、自分の希望する診療が受けられないことがあります。
また、発達障害の診断を受けて障害者手帳を受け取るためには、少なくとも6か月以上通院し、医師によるカウンセリングといくつかの検査を受ける必要があり、手帳の取得後も定期的な通院が必要です。
生活が困窮していて病院に通うことができない場合
「お金がなくて病院に行けない」という場合には、以下の制度を利用できます。
-
自立支援医療制度
医療費の減免(原則1割負担)が受けられる
-
生活困窮者自立支援制度
一時的な生活資金、家賃、就労、学習についての支援を受けられる
-
生活保護制度
医療費だけでなく、生活に関わる全ての事に関連した支援を受けられる
以上のような3つの制度があり、自身の生活困窮の程度によって必要な支援を受けることができ、その中で通院することも可能です。
自立支援医療制度の場合は、かかりつけの病院へ、生活困窮者自立支援制度と生活保護制度についてはお住まいの地域の相談窓口へご相談ください。
【大人の発達障害】診断されたら、どう気持ちの整理をつける?
大人になってから発達障害であると診断された場合、その事実に戸惑い、どうしたら良いか迷う方は多いでしょう。
つまるところ、大人になってから発達障害の診断を「受ける・受けない」という判断は、「いま困っているかどうか」や「どちらが本人にとって生きやすいか」というところがポイントになります。
発達障害の診断は、自己理解を促進させるための一つの方法であり、また、社会的にさまざまな福祉サービスや支援を受けるためには必要なものです。
本人が困っているなら、診断を受けて適切な制度を利用し、受けられる支援やサービスは受けた方が良いですし、苦しみに耐える必要はありません。
「診断を受けることによって障がい者になってしまうのではないか」と躊躇している方にお伝えできることがあるとするなら、あなたが「あなた」であることに変わりはないということです。
たとえ発達障害の診断を受けたとしても、無限に多様な個性や特性があるなかで、たまたまあなたに発達特性があるということが医師の検査やカウンセリングによって明らかになっただけのことで、あなたがあなたであることには何も変わりがありません。
とはいえ、周りの目や反応が気になる……という場合は、無理に診断結果を公表する義務はないため、信頼できる方や信頼できる職場、自分を支援してくれる機関、行政の支援制度を利用する際など、あなたのことをよく知っており、尊重してくれる場合にのみ伝えるだけでも問題はありません。
【大人の発達障害】診断を受けると利用できる制度・サービス
もしも発達障害と診断されたら、できることや受けられる支援はたくさんあります。
以下の項目で大人の発達障害の方を対象とした制度やサービスをご紹介します。
障害者手帳が発行される
発達障害と診断された場合、障害者手帳を申請することができます。
発達障害のある方が取得できる手帳は、「療育手帳」か「精神障害者保健福祉手帳」で、発達障害専用の障害者手帳はありません。
2つの障害者手帳の違いは、「知的障害が伴っているかどうか」です。
-
療育手帳
知的にも障がいが認められる発達障害がある場合に適用
-
精神障害者保健福祉手帳
知的には遅れがなく、成人後に判明した発達障害がある場合に適用
となっており、取得するには手続きが必要です。
お住まいの自治体に申請書を提出する必要があるので、以下の項目で手続きの流れを見ていきましょう。
療育手帳取得の流れ
- 申請者が18歳以上の場合、各都道府県に設置されている「心身障害者福祉センター」や「知的障害者更生相談所(各都道府県により名称が異なる)」などで判定を受ける。
- お住まいの障害福祉課に申請する
- 審査に通れば手帳を取得できる
※原則、2年ごとに児童相談所、または知的障害者更生相談所において、判定を行います。
精神障害者保健福祉手帳取得の流れ
- 精神科を受診する
(初診から6ヶ月以上経過しても発達障害の症状があり、現在も通院していることが条件) - お住まいの市区町村にある障害福祉課で書類を受け取る
- かかりつけの精神科で手帳申請用の診断書を書いてもらう
- 障害福祉課へ行き、書類と診断書を提出する
※2年ごとの更新が必要で、手帳交付までに数週間から2ヶ月以上かかる場合があります。
申請の手順や必要書類などは各市町村によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
障害者雇用枠で働ける
障害者手帳を取得できると、行政機関や一般企業にある採用枠である「障害者雇用枠」で働く機会が生まれます。
最初から障がいがある方前提の募集であるため、無理なく応募ができ、ある程度の理解と配慮を受けながら働けるところは大きなメリットといえます。
就労移行支援・就労継続支援が利用できる
「まだまだ普通に働くことはむずかしい……。」という方は、一般就労に向けて、就労のためのトレーニングを受けることができる「就労移行支援」を受ける方法と、就労についてさまざまなサポートを受けながら、実際に賃金を得ることもできる「就労継続支援A型・B型」で働くという2つの選択肢があります。
手帳を持っていれば、そのどちらの支援も受けることができます。
「就労移行支援」と「就労継続支援」、名称こそ似ていますが、支援の形や内容は大きく異なります。
【就労移行支援】
ビジネスマナーやコミュニケーションに関する講座やセルフケア、職業訓練等のプログラムを受けることができる。
また、履歴書の添削や面接練習、相談など、就職活動や就職後のフォローを受けられる。
【就労継続支援A型・B型】
賃金を得ながら一般就労に必要なスキルを実践的に身につけることができる。
A型は最低賃金以上の時給が保障されている。B型は出来高制だが、自由な日数・時間に支援を利用できる。
就労移行支援と就労継続支援の違いについては、以下の記事で取り扱っています。
このほかにも、発達障害と診断されたら利用できる就労支援先として以下があり、気軽に相談することができます。
- 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
- 地域障害者職業センター
- ハローワーク
など、それぞれ支援内容は異なっているため、
- 自分が何をしたいか、何ができるか
- 何に困っているか、何ができないか
- どんな支援を欲しているか
を明確にしてから相談先を選ぶとよいでしょう。
上で取り上げた就労支援先の一部は、以下の記事で詳しく解説しています。
障害者就業・生活支援センター
⇒「なかぽつ」こと「障害者就業・生活支援センター」とは?
地域障害者職業センター
⇒地域活動支援センターとは?活動内容や利用方法を解説
仕事ができないと思っている方に試してほしい20のこと
最後に、仕事ができない・うまくいかないと悩んでいる方に試してほしいことをご紹介します。
自分にもできそう、と思ったことがあれば、取り組んでみてはいかがでしょうか。
- 一人で無理せず、さまざまなものや制度の力を借りる。
- 医療機関や各自治体の支援制度、サービスをどんどん活用する。
- 背負い過ぎず、困ったときは信頼できる人や機関に早めに相談する。
- 助けを求める。
- 人に任せる習慣をつける。
- 助けてもらったら、感謝は忘れずに。
- 業務に完璧を求めるのではなく、完了したらOKとして終わらせる。
- 求められすぎている場合には、NOを伝える。
- 自分の状況をうまく他者に伝えられるように練習する。
- 相手にもそれぞれ、立場や事情があることを忘れずに。
- 自分の体調にも気を配る。
- 直すためではなく、理解するために自分を知る。
- 自分の生活をサポートしてくれる物や仕事に必要な物をあらかじめ用意しておく。
- 自分が不得意なことやできないことを補う方法を見つけておく。
- メンタルが落ちた時、自分を救ってくれる手段や物、事を用意しておく。
- 自分を癒す・満たす手段を見つけておく。
- 「なんだかうまくいかない・おかしい」と感じたら、人に意見を求める。
- 人の話をきちんと聞き、真摯に受け止める。
- 直列ではなく、並列に思考回路を増やしていく。
- 「得意なことだけやる」「できないことを無視する」のではなく、まずは自分の長所と短所を理解し、それぞれの対策を取ってから、自分の得意なことに目を向けて能力を伸ばす。
まとめ|仕事ができず、大人の発達障害かもしれない、と思ったら
- 発達障害はADHD(注意欠陥・多動症)、ASD(自閉症スペクトラム症)、LD/SLD(学習障害/限局性学習症)に大別され、それぞれ得意・不得意や特性、困りごとが異なる。大人になってから生きづらさを感じて医療機関を受診したところ、発達障害と診断されるケースが多いが、障がい自体は大人と子供に違いはない。
- 大人の発達障害でみられる特徴は、発達特性だけでなく、環境や過去、人間関係などが複雑に絡まって、さまざまな形で表れるため、一概にまとめることは難しい。同じ失敗を繰り返す、生活や仕事に支障が出ている等の場合、適切なケアを受けるために検査や診断を受けてみると良い。
- 発達障害かもしれないと思った際は、情報を集め、信頼できる方や支援機関へ相談してみると良い。支援機関の場合、精神科・心療内科を紹介してもらえる場合もある。生活が困窮していて病院へ行きづらい場合、医療費減免などの支援を受けられる場合があるため、役所等へ相談を。
- 発達障害の診断を受けた場合、障害者手帳の受給や、障がい者雇用枠で働ける、就労移行支援・就労継続支援が利用できる等の支援・サービスを受けられる。
発達特性によって、能力の凹凸(得意・不得意のアンバランスさ)や偏りが大きいと、自分ができないことがなにかをよく理解せず、得意なことだけを頑張ろうとしても、場合によっては自分ができないことが足を引っ張り、能力はあるのに得意なこと専念できず、力を発揮できない、という状態に陥ったり、失敗や挫折を繰り返してしまう恐れがあります。
そのような事態にならないためには、できる対策をきちんと行ってから得意なことに取り組みましょう。
大人でも、どのような障害特性でも、その人なりに変化・成長することは可能です。いくつであっても遅いことはありません。
家族や心許せる方とともに、医療や福祉・行政の力なども借りて、自分のペースで、課題を一つひとつクリアしていけると良いですね。