パニック障害とは、なんの前触れもなく突然、激しい動悸、息切れ、めまいなどのパニック発作が起こり、命に危険を感じるほどの強い恐怖に襲われる病気です。
パニック障害は多くの場合、過度なストレスがきっかけとなり発症しますが、パニック障害を発症しやすい人には特徴があり、性格に一定の傾向があることや、遺伝も影響していることが分かっています。
「原因はストレスだけじゃないの?」
「なりやすい人ってどんな性格なんだろう?」
性格については一般的に、不安や恐怖心の強さが指摘されますが、あなたにも当てはまる傾向があるかもしれません。
パニック障害になりやすい人とは、どんな人なのか気になっている方へ、
- パニック障害になりやすい人の特徴
- パニック障害になりやすい人の性格の傾向
- パニック障害を発症しやすい年齢
- パニック障害かもしれないと思ったらするべきこと
について解説していきます。
パニック障害になりやすい人の特徴
パニック障害の原因は、脳内神経伝達物質のバランスの乱れであると言われています。
強いストレスがかかると、脳内神経伝達物質の「セロトニン」と「ノルアドレナリン」のバランスが乱れて脳が誤作動を起こし、危険な状況が起きていると判断するため、死にそうなほどの恐怖や激しい動悸を感じるのです。
パニック障害はこういった脳の誤作動が原因で起こりますが、パニック障害を発症しやすい人には特徴があると言われています。
特徴には次の3つが挙げられます。
- 肉体的にひどく疲れている
- 精神的に追い詰められている
- 一親等にパニック障害の人がいる(遺伝)
肉体的にひどく疲れている
ハードワークでひどく疲れている、睡眠時間が足りていないという人は、パニック発作を起こしやすくなります。
身体的な疲れが重なると、疲労物質である乳酸が体にたまりますが、乳酸はパニック発作を引き起こす原因物質であるため、肉体的な疲れはパニック発作の大きな要因になるのです。
また、パニック障害の方は特に乳酸がたまりやすい性質であるとも言われています。
精神的に追い詰められている
仕事や育児などでやることに追われていて、常に気が張った状態で休むことができないという人も、パニック障害のリスクが高まります。
精神的に追い詰められていると、現状がこのまま続いていくことへの不安と恐怖心が高まり、強いストレスがかかって発作が起きやすくなります。
一親等にパニック障害の人がいる(遺伝)
パニック障害の発症には、遺伝も深く関係しています。
パニック障害は遺伝する傾向が強く、一親等血族がパニック障害である場合、遺伝率は43%であると報告されています。
これは、通常と比べて4~8倍の発生率があるということを表しており、遺伝の影響が大きいことが分かります。
パニック障害は、このように「肉体的・心理的なストレス」だけでなく、「遺伝」も関係しているのです。
パニック障害になりやすい人の性格の傾向
パニック障害になりやすい人の性格の傾向としては、次のものが挙げられます。
- 不安や恐怖心が強い
- 感受性が豊かで繊細
- 完璧主義で責任感が強い
- 人間関係でストレスを溜めやすい
- うつ病になったことがある
不安や恐怖心が強い
一般的に、パニック障害は、普段から不安や恐怖心が強い人がなりやすいと言われています。
不安や恐怖心が強い人には、次のような性格の人が当てはまります。
・他人からの評価をとても気にしてしまう
・人との会話など、対人面で過剰に緊張してしまう
・人前で恥ずかしい思いをするのでは、という恐怖がある
・仕事や日常生活に不安があり、将来についても悩みを抱えている
このような、心配性で、物事に動じやすい人は、些細なことでも心理的な負担を感じてしまうため、ストレスを蓄積しやすくなります。
感受性が豊かで繊細
感受性が豊かな人は、他人の言葉に敏感です。
相手の何気ない言葉も、気にし過ぎてネガティブな感情に陥ってしまう癖があります。
また、他人の「怒り」や「悲しみ」の感情に影響されやすく、共感力が高いので、他人の感情を自分の感情のようにとらえてしまい、気持ちが不安定になってストレスを溜める傾向があります。
完璧主義で責任感が強い
完璧主義の人は、目標が高く、結果を出すことこだわるため、たとえ調子が良くないときでも、手を抜かずに全力で取り組み、無理をしてしまうところがあります。
こだわりをもって目標を成し遂げることは大切ですが、仕事でも日常生活でも、完璧を目指ざし過ぎると、上手くいかなかったときに自分を責めてしまい、自分を苦しめる結果になることがあります。
自分自身を追い詰めてしまう癖がある人は注意が必要です。
人間関係でストレスを溜めやすい
人間関係の悩みは大なり小なり誰にでもあるものですが、特にストレスを溜めやすい人は、次のようなタイプの人が挙げられます。
・自己主張ができず、他人にコントロールされやすい
・自分の感情を抑制してしまい、怒ることができない
・他人への気配りが過剰で、常に人を優先してしまう
感情を抑えがちで、我慢することが当たり前になってしまっている人は、感情を抑え込めなくなった時に、一気にストレスが爆発する場合があります。
うつ病になったことがある
これまでにうつ病になったことがある人は、パニック障害にもなりやすいと言われています。
パニック障害もうつ病も、精神を落ち着かせる働きのある、神経伝達物質の「セロトニン」の異常分泌で発症する病気であると言われており、パニック障害とうつ病の併発は非常に多いパターンです。
パニック障害でうつ病を発症している人は、50~60%にも及びます。
パニック障害を発症しやすい年齢
パニック障害には、発症しやすい年齢があります。
男女ともに、パニック障害は10代後半から30代の間に発症することが多く、発症年齢のピークは、男性では25〜30歳くらい、女性では35歳前後となっています。
60代以降の発症はゼロではありませんが、やや珍しいと言われています。
パニック障害は女性の方がなりやすい
パニック障害は女性の方がなりやすく、罹患者は男性の2~3倍ほどと言われています。
確かな理由は分かっていませんが、女性はホルモンバランスの影響もあるため、パニック障害になりやすいのではないかと考えられています。
パニック障害かもしれないと思ったらするべきこと
パニック障害かもしれないと悩んでいる場合は、まず症状を確認してみましょう。
複数の症状に当てはまる場合は医療機関の受診をおすすめします。
パニック障害の症状をチェックする
パニック障害の症状には、「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」があります。
パニック発作自体は決して珍しいものではなく、一生のうちに10人に1人が経験すると言われていますが、パニック発作を何度も繰り返すようになると、「予期不安」や「広場恐怖」の症状が現れるようになり、パニック障害となります。
パニック発作
一言に発作と言っても、身体的に現れる症状と、精神的に現れる症状があります。それぞれがどのように発生するのかにも、個人差があります。
① 身体的症状
・呼吸困難、過呼吸、窒息感
・動悸、心拍数の急増
・めまい、ふらつき、頭が軽くなる、気が遠くなる
・発汗
・からだの震え、手足のしびれ
・突然の寒気、熱感
・胸痛、胸部の不快感
・吐き気、腹部の不快感
② 精神的症状
・頭が真っ白になる
・現実感がなくなる、自分が自分でないような離人症状
・自分をコントロールできなくなりそうな恐怖、気が狂いそうな予感がする恐怖
・死んでしまうのではないかと思う
予期不安
また発作が起こるのではないかという不安を感じる
広場恐怖
脱出が困難な場所や、助けを求められない状況などに恐怖を感じて避ける
医療機関を受診する
パニック障害は、自力で完治させることは難しいと言われています。
症状が進むと、発作への恐怖心から一人で外出することができなくなって引きこもってしまうケースもありますし、精神的な苦しみから、うつ病を発症してしまうこともあるため、治療を早く始めることがポイントです。
パニック障害の治療は、精神科や心療内科などで、
・薬物療法
・認知行動療法(精神療法)
などを組み合わせて行い、症状を改善せていきます。
薬物療法
パニック障害の薬物療法には、主にSSRI (選択的セロトニン再取り込み阻害薬) を使用します。
SSRIは、パニック障害などの不安障害に有効な薬で、セロトニンの働きを増強させることで症状を改善させていきます。
認知行動療法
パニック障害を正しく理解したうえで、パニック障害を引き起こしてしまう原因となっている、考え方や行動を改善していき、不安感、恐怖感をなくしていきます。
職場に相談する
パニック発作で仕事が手につかない、出勤することが怖い、という方は職場への相談が必要です。
職場に相談して配慮をもらい、業務の調整や在宅勤務への切り替えなどをしてもらうことで仕事を続けられる場合もあるので、一人で悩まずに相談してみましょう。
パニック障害に関する会社への相談については、以下の記事で詳しく解説しています。
さらに症状が重い方は、休職が必要な場合もあります。
休職については、職場や医療機関に相談し、手続きを進めていきましょう。
パニック障害に関する休職については、以下の記事で詳しく解説しています。
不安を自然な感情として受け入れてみる
パニック障害の方は、不安や恐怖を感じやすいため、少しの不安でも無理に排除しようとしてしまうところがありますが、感情に抗うと、より不安が増強されてしまいます。
不安な気持ちが沸き起こってきたときは、それを自分の自然な感情として受け入れ、ありのままの姿勢でいられるようにすることがパニック障害の改善につながります。
こうあるべきという価値観を緩めてみる
自分の理想としている、「こうあるべき」「こうでなければならない」といった気持ちを少し緩めて、柔軟な考え方を身につけることも重要です。
理想にとらわれ過ぎていると、上手くいかなかったたびに自分を責めてしまい、自己肯定感も下がってしまいます。
理想を持つことは、人生においてとても大切なことですが、「こうあるべき」とこだわり過ぎず、柔軟な考え方を身につけることが心地よい生き方につながります。
まとめ|パニック障害になりやすい人の特徴とは
- パニック障害は、肉体的にひどく疲れており、精神的に追い詰められている人がなりやすい
- パニック障害のなりやすさには、「不安を感じやすい性格」や「遺伝」が関係している
- パニック障害は、男女ともに10代後半から30代の発症が多く、女性は男性の2~3倍なりやすい
- パニック障害かもしれないと思ったら、「医療機関で早期治療行う」「こうあるべきという価値観を緩める」ことが必要
いかがでしたか?パニック障害になりやすい特徴に重なった、という方もいるかもしれませんね。
今回述べた、柔軟な考え方を身につけるためには、医療機関での相談のほかに、ご自身の周りの方々の「生き方」や「考え方」を参考にするのも良い方法です。
周りの価値観も参考にしながら、生活に活かしていきましょう。