ひきこもり・ニート

40代の引きこもりは手遅れ?中年ニートでも利用できる支援はある?

40代という世代の引きこもりは、社会問題となっている「8050問題(はちまるごーまる)」の足音が目前まで迫っている状況です。80代の親の収入を頼り、自立できない50代の子が自宅に引きこもっている構図から8050問題と呼ばれます。

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「親が死んだら生きていけなくなる……」

「もう40代という年齢では社会復帰は手遅れだろう……」

あなたがこの記事にたどり着いたということは、このようなお悩みをお持ちではないでしょうか?

40代であれば、まだ利用できる支援制度も存在します。本当に手遅れになってしまう前にできることを、一緒に考えていきましょう。

  • 40代無職引きこもりの原因や現状
  • 40代無職引きこもりに就職が難しい理由
  • 40代無職引きこもりが利用できる制度はあるのか?

について解説していきます。

40代以上の引きこもりの割合

引きこもり40代中年無職は手遅れ

内閣府が2023年に行った調査では、引きこもりは全国に推計で146万人いるとされています。この引きこもり調査について気になったため、私が内閣府に問い合わせたところ、より詳細な数字を聞くことができました。

2023年に内閣府は、15歳~39歳の世代の方2万人と、40歳~64歳の世代の方1万人に引きこもりについてのアンケートを送付しています。その中でも、15歳~39歳の世代からの回答は8550名、40歳~64歳の世代からの回答は5214名寄せられていました。

内閣府はこの回答の中から、引きこもりの状態であると判断された人の割合が、15歳~39歳の世代で2.05%、40歳~64歳の世代で2.02%であると導きだしています。

このパーセンテージを各世代の人数と掛けて数字を出すと、15歳~39歳の世代に62万人、40歳~64歳の世代に84万人の引きこもりがいると推計され、合計して約146万人という人数を導きだしたと教えて頂きました。

30代、40代、50代というように細かな世代で分けての引きこもりの人数は集計しておらず、40代の世代のみで引きこもりの方がどの程度いるかは回答できないとのことでした。

また、2023年に名古屋市が実施した生活状況の調査から、名古屋市内で引きこもり状態にある人は推計で2万2600人いるとわかっています。その中でも、40~50代の引きこもりが全体の6割を占めており、中年以上の引きこもりが深刻な問題となっている現状が浮き彫りとなりました。

40代が引きこもりとなる原因

暗い部屋で落ち込む男性

内閣府の調査によると、40代以上の中高年が引きこもりとなった主な原因は以下の通りです。

  • 退職した 36.2%
  • 病気や怪我 21.3%
  • 人間関係がうまくいかなかった 21.3%
  • 職場になじめなかった 19.1%
  • 就職活動に失敗した 6.4%

複数回答可であるため、病気や怪我で退職したケースや職場になじめず退職したケースなど、複数の原因によって引きこもりとなった人も多いと考えられます。

40代以上の当事者の引きこもり期間は以下のようになっています。

  • 7年以下 53%
  • 7~10年 11%
  • 10~20年 17%
  • 20~30年 13%
  • 30年以上 6%

半数近い方が7年以上にわたって引きこもりの状態であると分かります。20代頃から引きこもり、中高年になってしまった人が多いことも特徴的です。

また、現在40代の方には他の世代にはない特有の問題があり、それが引きこもりにつながっているケースもあります。以下で詳しく解説していきます。

就職氷河期が直撃した影響

現在40代の方が20代の頃は、就職活動に大きな問題がありました。就職氷河期と言われる1993年~2005年頃の期間で、有効求人倍率は最低で0.42を記録しました。この数値は、求職者10人のうち4人しか就職できないことを意味します。

そのため、自分が希望する業種に就けないのはもとより、就職できたとしても希望業種ではないため思うように活躍できず、解雇されてしまうケースもありました。多くの正社員になれなかった人々は、やむなく派遣社員やフリーターとして生計を立てるしかありませんでしたが、不安定な雇用形態であるため失業しやすく、思うようなキャリア形成も望めない状況でした。

40代が引きこもりになったきっかけは、退職などの仕事関係が多いことがわかっています。就職氷河期に就職活動に失敗したことや、職を失いやすい非正規雇用の方が失業したことなどをきっかけに、引きこもりが発生していると考えられます。

他の世代との価値観のズレ

40代の方の多くは70代の親を持っています。70代のいわゆる「団塊の世代」には、仕事一筋の父親と、働くことは当然であるという価値観をもった母親が多いです。一方、就職氷河期を経験している40代の子には「仕事をして家庭を持ち、子を授かる」という、これまで教えられてきた幸せの形を達成できなかった方も多く存在します。

こうした方々は、当事者の努力だけではどうしようもないほどの不景気だったにも関わらず、「働けないのは努力が足りなかっただけ」という自己責任論で切り捨てられてきました。これまで身に着けてきた価値観と思い通りにならない現実とのギャップに悩まされ、他の世代が出世して明るい道を歩んでいく姿を見せられる中で自己肯定感が低くなってしまいます。

このような世代間による価値観のすれ違いが、40代の方を引きこもりという状況に追い込んでしまいます。家庭においても親子による価値観の衝突が発生して、誰からも理解されない状況が生まれてしまうのです。

40代の引きこもりに就職が難しい理由

40代の未就業入職者(1年以上就職経験がなく、空白期間がある者)の就職率は、男女合わせて3.7%となっています。諦めなければ社会復帰は不可能ではありませんが、正社員として雇用されるには高いハードルを越えなければいけません。

あなたも、引きこもりの40代が企業から採用されにくいことは何となく理解しているはずです。40代引きこもりの就職が難しい理由について整理しましょう。

企業が求める人物像と異なる

一般的に企業が求める人物像は以下の通りです。

  • 社交性や協調性があること
  • スキルや実績があること
  • 若い人材であること

40代引きこもりの場合、90%を超える人が社会人経験を持っているというデータがありますが、それでも仕事に対するブランクがあることに変わりはありません。40代という年齢では採用しても活躍できる期間が短いため、これからのポテンシャルを評価することはできないのです。

人材育成という観点からも40代の人材は懸念される点があります。若い世代と比較しても体力の低下は避けられませんし、現役の頃のようには勉強できず、新しい業務内容を満足に習得できない場合もあります。

応募できる求人が少ない

40代の求人は管理職を求めていることが多く、募集人数も少なくなります。引きこもりで空白期間がある方にマネジメントを任せたいと考える企業はありません。

厚生労働省は、募集や採用において年齢制限を設けることを禁止していますが、長期的なキャリア育成のため35歳以下の人材に限定するなど、条件を満たせば年齢制限を付けられます。

仕事にブランクがある方の多くは経験者として扱われないため、未経験歓迎の求人に応募することになりますが、40代から応募できる求人の数がそもそも少ないのが現状です。

働くことにネガティブになっている

退職をきっかけに引きこもりとなる人が多いのは先述している通りです。生活のために仕方なく仕事をしていた方や、過去に仕事で大きな失敗や人間関係のトラブル、パワハラなどを経験した方が、もう働きたくないと思うのは当然のことでしょう。

仕事や人間関係の中に自分の居場所を見つけられなかった場合、これらはただの「辛い事」になってしまい心身を疲弊させてしまいます。もう社会で傷つきたくないという防衛本能が働いている状態では、あなた自身が就職に意識を向けることができないのです。

40代引きこもりは地域若者サポートステーションを利用できる

地域若者サポートステーションは「サポステ」(以下サポステと表記)の愛称で親しまれています。サポステは、厚生労働省から委託を受けた民間団体などによって運営されており、全ての都道府県に設置されています。

これまで、就職支援と言えば30代までを対象としているものが多く、40代の方は就職支援を受けることができない状況でした。サポステも以前は15歳~39歳までの年齢を対象とした就職支援機関でした。

しかし、2020年4月からサポステの利用対象年齢が見直され、15歳~49歳の方が利用できるようになりました。これは、40代の方の多くが未だに就職氷河期の影響で満足に就労できていない現状を考慮されたためです。

あなたは就職に向けて以下のような不安を抱えてはいませんか?

  • 就職活動のやり方がわからない
  • 引きこもりの空白期間があるから採用されないのではないか?
  • 正社員経験がなく、短期離職をくり返している
  • 就職してもこれまでと同じように職場に馴染めないのではないか?

サポステでは、キャリアコンサルタントやカウンセラーが担当となり、個別に面談が行われます。40代で働きだす準備に困っている方にとって、サポステはこの上ない相談先となります。

40代引きこもりの方が社会復帰をするためのコツは「一人で就職活動をしない」ことです。40代引きこもりという状況は、就職を目指す上で不利な要素が多くあります。そのため、書類選考が通らない、面接が突破できないといった事態に直面することがあります。

このような時、相談できる人がいることはモチベーションの維持に繋がります。就職支援のプロの視点からアドバイスを貰えるのは、とても心強いでしょう。

参照:就職氷河期世代の方々への支援のご案内|厚生労働省

 

地域若者サポートステーションについては、以下の記事でも詳しく解説しております。

40代が引きこもりから脱出するためにできること

分かれた道、変更点

40代の就職支援として「サポステ」の存在を挙げました。しかし、サポステを知っただけであなたは社会復帰を目指そうと思ったでしょうか? 引きこもり当事者が支援機関を適切に頼れない、自らSOSを発信できないという問題が引きこもり支援の難しさの根底にあるのです。

引きこもりは、長期化するほど社会復帰が難しくなります。「家庭の問題」とされやすい引きこもりは、親や引きこもり当事者が経済的な困窮や健康面などの問題に直面し、生活が成り立たなくなってはじめて表面化するケースも多いのです。

今すぐ社会復帰に向けて動き出さなくても生活はできるでしょう。ですが、引きこもりを続けているうちに、生活が破綻する瞬間は必ず訪れます。そのため、社会復帰に向けて少しでも早く行動を起こすことが重要です。サポステを利用する他にも、次のような取り組みがオススメです。

働く前に生活を整える

引きこもりを続けていると、体力が落ちたと感じる瞬間はありませんか?引きこもりになると外出の機会が減るため、体力の低下は避けられません。日常的に軽い運動を意識して行う必要があります。

また、生活習慣を改善する必要もあります。毎日朝に起きて夜に就寝するサイクルができていなければ、なかなか疲れが取れない体になってしまいます。

以下の記事も参考に、まずは体力づくりや生活リズムを整えることから始めても良いでしょう。

引きこもりの方に向けた体力づくりの記事はこちらです。

引きこもりの方に向けた昼夜逆転の改善方法はこちらです。

心療内科やメンタルクリニックに相談する

引きこもりと精神疾患は密接に関わっていることがわかっています。そのため、心療内科やメンタルクリニックには、引きこもりの専門外来を設けている病院が多くあります。

  • 強い倦怠感から何もやる気が起こらない
  • マイナスな事ばかり考えてしまう
  • 人と話すのが怖いと感じる

これらのような症状がある時は、治療を受けることで改善する可能性があります。

心療内科やメンタルクリニックを受診することに抵抗を感じる方もいるでしょう。しかし、メンタルの部分に不調があった場合、放置していてもあなたが辛くなるだけです。

精神科医を受診して何か病名がついた際は、障害手帳や障害年金などの制度が利用できるようになります。それぞれの特徴は、次のようになっています。

参照:全国の引きこもり専門外来のある病院・クリニック一覧(88件) – 病院・歯科検索サイト【ホスピタ】

精神障害者保健福祉手帳

一定程度の精神障害が認められた場合に、当事者の自立と社会参加の促進を目的として交付されるのが精神障害者保健福祉手帳です。障がいの程度により1~3級のいずれかの等級の手帳が渡されます。

精神障害者保健福祉手帳の申請には、初めて病院を受診した日から6ヶ月以上経過している必要があります。

精神障害者保健福祉手帳を持つことで受けられるサービスは、地域ごとに内容が異なる場合もありますが、おおむね以下の通りです。

  • 公共料金の割引(税金の控除・減額)
  • 鉄道、バスなどの運賃割引
  • 公共施設の入場料割引
  • 障がい者雇用を利用できる

参照:障害者手帳について|厚生労働省

障害年金

病気などが原因で仕事に制限を受ける方が受け取ることができるのが障害年金です。障害年金も1~3級までの等級があり、等級によって貰える金額が変わります。

参照:障害年金|日本年金機構

まとめ

  • 40代の方は、退職をきっかけに引きこもりになったケースが多い。中には就職氷河期の影響など世代特有の原因をもつ方もいる
  • 40代引きこもりは多くの企業が求める人物像と異なり、応募できる求人も少ないため、就職が困難になってしまう
  • 40代で利用できる支援制度が少ない中、地域若者サポートステーションは49歳までを対象としているため、オススメ
  • 40代引きこもりの方は、少しでも早く行動したほうが良い。生活リズムを整えることから始めてもいいし、心療内科に相談するのも有効

40代の方が引きこもりを続けた結果、時にはニュースに取り上げられるような悲惨な末路を迎えるケースも珍しくありません。

そうならないためにも、自分のペースで社会復帰に向けて歩き出しましょう。

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